パブリック・フットパス

<Public Footpaths> 週末は断続的に雪が降り、家の前の道路もかなり積もったが、今日は朝から快晴だった。子供のホームスクーリングが午前9時に始まるので、その前に近所の農地に散歩に連れ出した。学校閉鎖で体育の授業もないので、運動不足を少しでも解消してやりたいし、もちろん自分の健康のためでもある。

住宅街に立つパブリック・フットパスのサイン。「誰でも通れる歩道が伸びていますよ」と誘われる気分に・・・

コッツウォルズに限らず、イギリス中いたるところにあるのがパブリック・フットパス(Public Footpath—公共歩道)である。このサインを見つけたら、指示する方向に歩いていけば、市街地を抜けて自然豊かな場所に出られる。それは林だったり、水辺だったりもするが、コッツウォルズであれば大抵、畑地や牧草地である。そのほとんどは私有地であるが、パブリック・フットパスである限り誰でも自由に通行できる。

ウォーキングやジョギングに便利なこの道は、最初から市民の余暇のためにあったわけではない。その歴史は古く、数百年前にもさかのぼるという。住民が土地を突っ切って農作業に出かけたり、市場や教会に行ったりできるよう、土地の一部分を通行する権利が公共の権利、ライト・オブ・ウェイ(Right of Way—通行の権利)となった。パブリック・フットパスは、乗馬者も通行できるパブリック・ブライドルウェイ(Public Bridleway—公共馬道)等と並んで、この公共の通行権を体現したものとして現在まで続いているものだ。

雪景色のフットパス。時間は午前8時の日の出の少し後。この道を小一時間も歩いていけば隣村のイーヴンロード(Evenlode)へ行くことができる。
雪の下はカブ畑。季節によって作物は変わり、牛や羊が放牧される時期もある。

よく知らないないので想像するだけだが、日本の入会権とか地役権に近い考え方なのだろうか。しかしイギリスのライト・オブ・ウェイが面白いのは、まず、土地の権利関係が変わっても影響を受けない点である。例えば宅地開発や商業施設の建設を行っても、その土地を貫通しているパブリック・フットパスやパブリック・ブライドルウェイは必ず残さなければならない。昔から皆が利用してきた歩道や馬道を勝手になくしてしまうことは、土地の所有者といえどもできないのである。

そして、ライト・オブ・ウェイは全国に網の目のように張り巡らされている(ロンドンとスコットランドは規定が違うが、同じような制度はある)。中には長さ数百キロに及ぶものも珍しくない。コッツウォルズはフットパスを利用した長距離ハイキングルートが多数あるが、それらもイギリス中に伸びるライト・オブ・ウェイの壮大なネットワークのごく一部分にすぎない。

参考サイト:FootPathMap(Googleマップでは分からないフットパスがすべて網羅されているので便利)