<UK’s Mass Vaccination Campaign> イギリス政府は、来週から毎日50万人という猛烈な勢いで新型コロナウイルスのワクチン接種を進めていく予定である(『タイムズ』紙)。現在の一日21万人のペースを2倍以上加速し、2月半ばまでに高リスク・グループ1,500万人への接種を実現すると宣言している。そしてそのために、24時間・年中無休のワクチン接種サービスをできるだけ早く開始すると、ジョンソン首相は議会のクエスチョンタイムで述べた(『タイムズ』紙)。
これが果たしてどこまで実現するのかは、ワクチンの供給状況やロジスティクス、現場の組織化の問題があるために現時点ではなんともいえない。しかし、そのような方向で対策がどんどん実施されていくことは大歓迎だし、期待もふくらむ。
EU離脱の移行期間を経てブレグジットがついに現実化した今年初め以来、英政府は目に見えるパフォーマンスの向上に力を入れているようにみえる。離脱すれば経済も社会もボロボロになると多くの人が警告してきた。その予想を覆し、離脱の実利を多くの国民が感じられるようにすることは、政府の大きな関心であるに違いない。ワクチン接種のスピード実施はその恰好の事例となりうる。
事実、現時点でイギリス国内居住者のワクチン接種率は、世界的にきわめて高い。タイムズ紙掲載の各国の比較(“Coronavirus Vaccination Progress”)を見ると、1月13日現在、トップに立つのがイスラエル(22.3%)、第2位がアラブ首長国連邦(14.1%)で、ジブラルタル、バーレーンと続き、イギリス(4.2%)が5番目についている。他方、EU諸国は、デンマーク(2.0%)、イタリア(1.3%)、スロベニア(1.2%)、スペイン、エストニア、リトアニア(各1%)をのぞけばいずれも1%未満で、フランスを始めとする多くの国が0.5%にも届いていない(なお世界平均は0.4%)。EU域内は医薬品の承認プロセスが複雑であるうえ、どの企業のワクチンを使うかの決定に各国の利権がからみ、時間がかかっているという。集権化の弊害の一つといえる。巨大ブロックを飛び出したイギリスが、小国として機敏に国民サービスを提供できる国になったのであれば、大いに喜ばしい。